白衣の歴史

白衣の歴史 -ナースの場合

ナースの起源は中世ヨーロッパにさかのぼります。カトリック教会の修道女、つまりシスターが病人のケアに関わりはじめたのが起源です。
そのため、ナースの多くが今でも女性です。また、少し前までよく見かけたナースキャップは、修道女が用いたベールのなごりとも言われます。
ナイチンゲールの時代でも丈の長い服が着用されていましたが、これも中世のなごりです。
 
そのフローレンス・ナイチンゲールですが、1854~1856年のクリミア戦争に従軍し、献身的な看護と念入りな衛生管理によって
傷病兵の死亡率を劇的に低下させた手腕が高く評価され、イギリス史上初の女性受勲者となっています。
看護婦はしばしば「白衣の天使」と称されますが、これは、彼女が「クリミアの天使」と呼ばれたことに由来します。
イギリス陸軍の上層部にナーシングケアの重要性を認識させるため、説得力のある統計データを突きつけたことでも知られています。
5月12日は世界的に「看護師の日」と認知されていますが、この日はナイチンゲールの誕生日にあたります。
服装の点では、ナイチンゲール以下、クリミア戦争に従軍した看護婦らは、ふつうの長袖ワンピースに白い袖なしエプロン、それに帽子を着用していました。
今日のナース用白衣とはかなり違います。強いて言えば、「白いエプロン」に今日の白衣につながる要素がありそうです。
 
ナイチンゲールの影響を受け、日本においては1885 年に看護婦養成の教育が始まりました。
看護婦養成所で着用された制服は、式服と平常服があり、平常着は筒袖の上着と袴のような長いスカートに草履、そして、やはり白いエプロンを着けていました。式服は詰襟で袖肩にパッドを入れて高くし、八枚はぎの裾の長いスカート。式服、平常服、いずれもまだ、今日の白衣の形になっていません。
 
ワンピース型の白衣が採用されるのは、昭和に入ってからになります。
日中戦争がはじまった1937年、日本赤十字社は看護救護員として戦場に女性看護師を送り出しました。
このときにユニフォームとして採用されたのが、ワンピース型の白衣でした。長袖とロングスカートで、やや大きなナースキャップをかぶるものです。
 
そして戦後になって、アメリカの医療機関に勤める女性看護師の白衣の影響で、綿でできたワンピーススタイルの白衣が日本でも全国的に普及しました。
1960年代には、ファッションの多様化とともに白衣においてもデザイン性が重視されるようになりました。
イージーケアの観点から、ポリエステル等の化学繊維を使用した白衣も増えていきます。
1980年代にはデザイナーズブランドの流行が白衣にも導入されます。
高いデザイン性とともに、制電性・防汚性・防皺性・制菌性などの高機能素材が開発されます。
1970年代、パンツファッションの流行とともに、白衣にもパンツスタイルが取り入れられるようになりました。
男性看護師が増えたことと、動きやすさ、感染予防の観点から、1990年代後半にはワンピースよりパンツスタイルの採用が増え、
ナースキャップ廃止の動きが顕著となりました。
1990年代より、アメリカで医療用ユニフォームとしてスクラブが着用されはじめました。
手術着として着用されていたスクラブは、実用性が高く男女ともに着用できるユニフォームとして、ドクター、ナースに広まりました。
日本でもドラマの影響などでスクラブの採用が増え、ネイビーブルーやワインレッドなど、
今まで病院では着用されていなかったカラーのユニフォームが増えていきました。
 
日本以外のいろいろな国におけるナースの服装に目を向けると、白を基調とする点は共通していますが、それぞれの民族衣装の形に影響されています。
韓国はチマチョゴリ風ですし、インドではサリー、マレーシアやインドネシアはイスラム圏ですので、髪をすっぽり覆うスカーフ状のナースキャップをします。
アメリカは上に書いたように、ネイビーブルーやワインレッドなどカラフルな傾向が強くなっています。
 
ところで、看護師養成学校の卒業式にあたる感動的な戴帽式で主役となるナースキャップですが、女性看護師を象徴するイメージがあるものの、
最近はあまり見かけなくなりました。
これは、1990年代頃から、大学病院をはじめ多くの医療機関でナースキャップを廃止する動きが急速に広がったためです。
ナースキャップはT字型をした一枚の布で、これを折りたたんで頭に乗せ、ピンで固定するというものです。
形を整えるためにノリで固める場合もあります。
ナースキャップの目的は「髪の毛をまとめる」ことですが、そのためであればほかにもっと簡単な方法がいくらでもあり、
「ナースキャップは面倒なだけで意味がない」と指摘されるようになりました。
それ以外にも、「ノリに細菌が付き、増殖してしまう」という衛生上の問題も指摘され、「ナースキャップが点滴の袋やチューブにひっかかってしまう」
という危険や、「ヘアピンで固定するので、髪の毛や頭皮に負担がかかり、脱毛などのトラブルを招く」といった難点もあり、
今ではほとんどの医療機関でナースキャップは廃止されています。
ナースキャップの象徴的な意味やナースの目印としての意義を認めて、まだ採用している医療機関もありますが、ごく一部です。


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