白衣の歴史

白衣の歴史 -医師の場合

2019年03月13日 15時53分


医師の白衣も、日本では明治時代から着用されはじめています。
初期のうちは、和服のうえから羽織るように身にまといました。しかしほどなく洋装が中心となり、コート型の白衣が一般化します。
戦後になって、すそがあまり床に近いと衛生上問題があるとされ、「床から9寸」という丈の基準が定められました。
 
ドクター用の白衣に大きな変革が起こったのは「ケーシー型」の登場によってです。
「ケーシー型」はセパレート式の上着で、丈が腰より少し下くらいまでで、前がしっかり閉じられ、首まわりがタートルネック、半袖のものです。
コート型だと手足を大きく動かす動作にボタンがひっかかるなど邪魔になることがありますが、ケーシー型はより身体にぴったりフィットしており、
下半身はパンツスタイルなので、コート型よりも動きやすくなっています。
そのため、外科系の医師・歯科医師・男性看護師・臨床工学技士・作業療法士・理学療法士などに用いられることが多くなっています。
「ケーシー型」という呼び名は、1960年代のアメリカで放映された医療ドラマ、『ベン・ケーシー』に由来します。
ヴィンセント・エドワード演じる、このドラマの主人公であるドクター・ベン・ケーシーが、このセパレート型の丈の短いシャツ状の白衣を着て
活躍していました。そのイメージから、「ケーシー型」という呼び名が定着したのです。
ちなみに、『ベン・ケーシー』は1962年から日本でもTBSがテレビ放映し、最高視聴率50.2%を記録しています。
この視聴率は海外ドラマのものとしてナンバー1で、2017年現在の今でも破られていません。
さらに参考までに、医療ネタを得意とするコメディアン、ケーシー高峯が着ているのも、もちろんケーシー型です。
 
1990年代になると、女性看護師の白衣と同様に、アメリカで普及していたスクラブも導入されてきます。
こちらもまた、ジョージ・クルーニーの出世作となったアメリカの医療ドラマ、『ER緊急救命室』が日本での普及に大きく影響しているようです。
 
メディカルウェアは現在でも進化を続けており、繊維や縫製に工夫して動きをさまたげないストレッチ性を持たせたり、抗菌防臭性を持たせたりと、
さまざまな機能を持つようになってきています。
最近のメディカルウェアが持つ機能には次のようなものがあります。
立体裁断
 繊維を布に形成する時点で、白衣のパーツを身体の部位ごとの形にあわせて立体的に織り上げたものを使います。
 身体にフィットして着心地のよい白衣になります。
 
形状記憶
 形状記憶素材を織り込んだ繊維を用いた白衣を、縫製後に高温処理して形状を記憶させます。
 しわになりにくく、且つ、折り目が消えることのない白衣にできます。しわになっても簡単に伸ばせる特性もあります。
 
ストレッチ性
 ナースや作業療法士などは、業務中に手足を大きく動かす動作をとることがあります。
 そのような動作がスムーズにとれるように、伸縮性にすぐれた素材を用いた白衣です。
 メディカルウェア業界に参入したスポーツウェアメーカーがリリースしているものもあります。
 
抗菌性
 亜鉛系や銀イオン系など、無機抗菌剤を織り込んだ繊維を使います。
 MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌などに作用して細胞膜を破壊し、増殖を抑制します。
 以前は、人によっては皮膚炎症を起こすこともありましたが、最近は抗菌剤の安全性が高まり、障害を起こすことは少なくなりました。
 防臭性も兼ね備えます。
 「SEKマーク」による認証制度があり、抗菌性能の目安になります。
 
制電性
 制電糸を用いた白衣で、空気が乾燥した環境でも静電気を帯電しにくいようになっています。
 ほこりや菌を吸着しにくく、静電気による医療機器への悪影響も避けられます。
 
透け防止
 白い服にはアンダーウェアのラインが透けやすいという弱点がありました。この弱点をカバーする、透け防止素材を用いた白衣があります。
 裏地の布の明度を低くすることで透けを防止するものもあります。
 
防汚性
 汚れがつきにくい加工をほどこされた白衣です。撥水性を持つものもあります。
 
防縮性
 洗濯しても縮みにくい性質を持たされた白衣です。
 
吸汗性
 汗をすばやく吸い取り、肌へのべたつきを押さえる素材で作られた白衣です。
 
防水性
 撥水性のある繊維で作られた白衣です。蒸れないようにごく小さな穴をたくさん開け、通気性を持たせたものもあります。
 
軽量性
 薬品などに対するバリア性が必要な白衣は、やや厚手の布で作られる傾向があります。
 厚手であっても軽量な白衣もリリースされています。長時間着ていても疲れにくくなっています。